電子書籍市場の今後は?-PAGE2010

 社団法人日本印刷技術協会は、2月3日から5日まで、「PAGE2010」を池袋のサンシャインコンベンションセンターTOKYOで開催した。「PAGE(ページ)」は、1988年に印刷、メディア業界のコンベンションとして始まって以来、毎年2月に開催されており、今回で23回目。今年は「新生グラフィックビジネス」を全体テーマに、従来のDTP関連・JDF/MISに加え、デジタルプリントやクロスメディア、デジタルサイネージなど今後の印刷ビジネスを探る。入場料は1000円だが、Webサイトで登録すれば無料。

 

 会場では企業展示のほか、有料・無料の各種コンファレンス・セミナーも開催されている。今回編集部では、キンドルの日本上陸、先日のアップル社による「iPad」発表など話題豊富な電子書籍市場に注目。4日午前に行われたコンファレンスのうち、「新たなビジネスチャンスを生み出す電子書籍市場」を取材した。
 

 コンファレンスではまず、情報通信総合研究所副主任研究員で、同コンファレンスのモデレータを務める水野秀幸氏が講演。米国の電子書籍市場について、2007年に登場したアマゾンの「キンドル」を中心に紹介した。水野氏はキンドルについて「あまり新聞に書かれていないが、携帯電話だ」と指摘。アマゾンは携帯会社のMVNO(仮想移動体通信事業者。自社では通信網を持たず、実際に保有している他の業者から借りてサービスを提供する事業者)としてキンドルにSIMカードを組み込んでおり、その電話番号に向けてコンテンツを配信する仕組みが取られているとした。

 水野氏はアマゾンが成功している理由について「端末とコンテンツ、通信回線も一緒にバンドルしたビジネスモデルであり、簡単に本が手に入る」「ハードカバー本が30、40ドルするのに対して、キンドルでは10ドルで買える。本をたくさん買う人はキンドルに30000円ほど払ったとしても長い目で見れば元が取れる」ことを挙げた。そして今やアマゾンはコンテンツのプライスを握り、「アマゾンが動けばマーケットが動く、という存在になりつつある」と強調した。  水野氏は最後に、今後、ビジネスモデル、電子書籍市場がどう変わっていくかを占うトピックとして、5つの注目すべきポイントを挙げた。

1.今後書籍はどこで売られるか?

 リアルか、オンラインか、それとも住み分けされるのか。

 

 2.ハードウェア  

 今は乱立状態になっている。音楽でiPodが一人勝ちしたように、果たして「この電子書籍リーダー」、という状態になるのか。あるいは携帯電話のように多様化するのか。専用リーダーがいいのか、iPadのようなタブレットか。ここは先行きが良く分からない。

 

 3.フォーマット

  アマゾンのフォーマットは、クローズで、キンドルでしか閲覧できない。他の端末が普及したときに、貸したり端末そのものを買い換えたりした場合にコンテンツが読めなくなる可能性が指摘されている。   一方、ソニーやバーンズ・アンド・ノーブルのデバイスは「ePub」という標準化されたオープンなフォーマットだ。

 

 4.既存メディア

  新聞や雑誌が落ち込んでいると聞くが、電子書籍になったときに、伝統的メディアの方は、媒体が変わることでまた盛り上がってくるのかどうか。

 

 5.コンテンツホルダー

  アマゾンは誰でも電子書籍を作って良い、としている。キンドルストアで有料販売ができるが、売上の70%は作家へ、30%はアマゾンが場所提供代として貰う、としており、それで誰でも本を出せる。となると編集や出版関係の仕事が今後どうなっていくか。   映像の世界では、「プロシューマ」、プロ化したコンシューマ(たとえば、ケータイ小説など)、こういう人達が出てくる。今後誰がコンテンツホルダーになるのか、というところも動きがあるかもしれない。
 

この後、イースト株式会社コミュニケーション事業部シニアマネージャーの藤原隆弘氏による海外の電子書籍市場動向、方正株式会社の河田京三氏による中国の最新電子書籍市場事情、そして株式会社電通の雑誌局アソシエイト・スーパーバイザー、金子信也氏による電子雑誌書店「MAGASTORE(マガストア)」の経緯と今後の戦略についてそれぞれ紹介があった。

 

 コンファレンスの最後に水野氏は「(コンテンツを)iPhoneに出すのがいいのか、Androidに出すのがいいのか、など『勝ち馬』を考えるのは不毛な議論だ」と指摘。「デバイスとマーケットプレイスが垂直統合のような形で動いているが、いつもそれに対して、色々なものに対応できるような『横通し』をしようという動きが出てくるものだ」との見解を披露して締めくくった。

  

中国での電子書籍最新事情と日本での展開 レベニューシェアで参入の敷居低く

 水野氏の後に講演した方正株式会社出版ビジネスユニットの河田京三氏の「方正の進める電子ブックビジネスと電子ブック中国最新事情」では、まず方正の電子書籍フォーマット「Apabi(アパビ)」について紹介。Apabiは、中国の電子書籍市場で80%以上のシャアを持ち、400以上の出版社、主要新聞社の31%と契約し、50万タイトルをリリース。オンライン図書館システムも扱っており、海外ではハーバード大やカリフォルニア大など、中国国内では4000もの図書館で採用されているほか、中国国内のみながら、キンドルのような電子書籍端末もあり、中国では圧倒的な存在となっている。

 Apabiの大きな特徴として、同社固有技術による強力なDRM(著作権保護)でコンテンツを保護しており、しかも2000年と早い段階から立ち上げていること、デバイスの状態に応じて表示法を変更できるデータ形式で、中国ではデファクトスタンダードとなっていることを挙げた。

 河田氏はその後、日本でのビジネス展開についても紹介。中国のApabiの技術を使い、2月1日からはiPhone向けに「デイリースポーツ」の配信サービスを開始(ただし海外のみ。今後はAndroidやWindows Mobileにも拡大)したほか、「ニュースメディアスタンド」というポータルサイトを立ち上げ、iPhone、Android向けに1日からスタートさせていることを明らかにした(「日本食糧新聞」「日食外食レストラン新聞」「百菜元気新聞」など業界紙、専門紙10社が参加)。また、同社のプラットフォームの大きなメリットとして、出版社が決めた価格による売上から互いが収入を得るという「レベニューシェアで、月額利用料もかからず、リスクは無い」とし、参加への敷居の低さを強調した。

 

※編集部より

順次動画や記事を追加していく予定です。また、Twitterアカウント「NN_Japan」で、#PAGE2010_NNJ としてイースト社の発表途中までは中継していました。メモ程度ですが、よろしければ御覧下さい。

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